安心の外為ファイネスト

計算書類規則の立場は,自社株といっても財産的価値はあるし,短期に処分するものをことさら資本の払い戻しとする必要性も乏しいので,資産計上を認めようというものでした。
しかし,後述のストックオプション制度による長期保有株が出てくると,その理由も希薄になりそうです。
いずれ処分するといっても,「株主が払い込んでいない」資本金があるということは,株式会社としては異常なことで,従来の慣行にならっていればいいのか議論の余地がありそうです。
こういったことなどから,商法では配当可能利益を計算する際,ある種類の自己株式については資産計上額に見合う額を控除するよう求めています(商290①五)。
つまり,試験研究費などの繰延資産と同じように,資産とはいえ配当できる財産とはしていないわけです。
このある種類とは,従業員持株会に譲渡するため取得した自己株式,ストックオプション制度により取得した自己株式,譲渡制限の付いた株式を相続人から買い受けて取得した自己株式の3つです。
これらはいずれも特別な条件の下に会社が保有することを認められている自己株式ですので,配当財源からは除くこととなっています。
なお,上場会社や店頭登録会社が有価証券報告書の中に記載する連結財務諸表では,従来から自社株は資本の控除項目とされていました。
今後これらの会社で自社株取得が大きくなると,単体と連結で自己資本比率にも微妙な相違が出てきそうです。
平成9年の新聞には,ストックオプションに関する記事がたくさん掲載されました。
また,景気回復,経済成長の特効薬のようなもてはやされ方で,少し心配もありますが,経済界の大きな期待に包まれて登場した制度です。
ストックオプションとは,会社が取締役・従業員に対して将来においてあらかじめ定められた価格で自社株を購入することができる権利(オプション)を与えるものです。
例えば,現在株価が500円の会社で,600円で自社株を買う権利を与えるとすると,取締役・従業員が努力して会社の業績が上がり,将来株価が1,000円になった時に権利行使すれば,差額400円か取締役・従業員の利益になります。
このように業績の向上イコール株価上昇とすれば,取締役等の努力が直接的に自分たちの利益にはね返りますから,取締役等に対するインセンティブ(動機付け)として効果が高いといわれています。
ストックオプションには2種類の制度があり,取締役等に与える自社株を市場から購入するものと,新株を発行して与えるものがあります。
市場から購入するタイプの場合は,まず定時株主総会で,オプションを与える取締役等の氏名,譲渡する株式の種類,数,譲渡価格,権利行使期間などについて承認を得る必要があります。
もちろんこれも自社株取得の一種ですから,その点についての承認も合わせて必要です(商210ノ2②)。
この取得株数は発行済株式総数の10%以内でなければなりません。
さて,これで取締役等にオプションを与えられるわけですが,オプションのための株は承認決議の日から次の定時総会の日までの間に取得しなければなりません。
また,これは配当可能利益を源泉として行われるものなので,その年度の終わりに配当可能利益がなくなりそうな場合は,自社株取得はできなくなります。
取締役等の権利行使期間は決議の日から10年を超えることはできません。
その範囲内で,取締役等はいつでも権利行使することができます。
ただし,取締役を退任した場合,権利が消滅するなどの条件を付すことはできます。
業績の動向などにより,権利行使期間の終期(最大10年)まで自社株が残っていたら,その時点で早急に処分することになっています。
つまり,一度取得した自社株を10年間保有しつづける場合もあるということです。
ストックオプションのための自社株式についても営業報告書への記載(計規45①八の二)が必要ですが,これはこの間の状況を株主がチェックできるようにするためのものです。
さて,ワラント(新株引受権)方式の場合は,まず,取締役等に新株引受権を与えることができる旨を定款に定める必要があります。
その上でご特定の者に新株を発行することになるので,株主総会の特別決議が必要になります。
その他,権利行使の方法や権利行使期間などの定めは,市場から購入して与える場合とほとんど同じです。
このようにして付与した新株引受権は,新株引受権付社債を発行した場合と同様,貸借対照表に注記することになっています。
ストックオプション制度は,先に説明したようにインセンティブとして大きな効果が期待される半面,運用を間違えると会社の私物化に結び付くおそれがあるので,株主としては十分監視の目を光らせておくべきでしょう。
経営陣などにストックオプションを与えるのが取締役会であるという点は欧米も日本も同じなのですが,欧米の取締役会は株主代表としての色合いが強く,経営陣と異なるメンバーがとても多いのが特徴です。
したがって,いわば評価する者と評価される者がはっきり分かれています。
これに対して,日本の場合は取締役会のメンバーと経営陣はほとんど同じですから,株主総会の承認が必要とはいえ,評価する者と評価される者が同じというケースがきわめて多くなります。
このため,株主総会できちんと審議しないと“お手盛り”になる危険があります。
これはストックオプションを与える時の問題ですが,もうひとつ,決算に関わる問題もあります。
それは市場から購入するタイプの場合ですが,前の例のように600円で買う権利を与えており,そのために会社が株を市場で購入したら,購入価格が800円になってしまった,というケースです。
オプションの行使があれば差額の200円は会社の損失になりますから,この状態で決算を迎えると偶発損失としての注記が必要です。
また,例えば,ある年度で多額の債権を貸倒処理するか否か決断を迫られた時,貸倒処理をすれば決算は赤字になり株価も下がることが予想されるとしたら,ストックオプションを有する取締役等は客観的な判断ができるでしょうか。
あるいは積極的に不良資産の処理をして財務内容を改善しようという決断ができるでしょうか。
もちろん決算の妥当性は,会計監査人や監査役がチェックしますが,決算には経営者の判断や意思が色濃く反映されるものです。
その場合に,決算が自分の権利の価値に影響するとしたら,決断がにぶる危険もないわけではないと考えておかなければなりません。
損益計算書を読む。
損益計算書は,一事業年度の経営成績を表す重要な資料です。
損益計算書はまた,資本の増差分の内訳計算書,配当可能利益の増差分の内訳計算書とも位置付けられます。
会社の経営成績を知るためには,損益計算書の当期利益だけでなく,経常利益,営業利益,そして明記されてはいませんが売上総利益などの動きにも注目する必要があります。
営業成績とは何か損益計算書は,会社の営業成績を示す資料といわれています。
会社は常にさまざまな環境に囲まれており,それらの環境から影響を受けることもあれば,逆にそれらの環境に多大な影響を及ぼすこともあります。
このため,会社の社会的責任,政治・経済から国民生活,自然環境に至るまでその役割を問われることもあります。


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